Songs of Stars ①宮沢賢治「星めぐりの歌」

SiriuSセカンドアルバム「星めぐりの歌」、12月23日の発売をひかえ、収録曲について僕なりに調べたり、勉強してみたことを徒然に書かせていただく「Songs of Stars」。第一弾はアルバムタイトルでもある宮沢賢治「星めぐりの歌」です。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

小学校の教科書でも取り扱われる宮沢賢治(1896~1933)の「雨ニモマケズ」。一度は暗記したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

宮沢賢治の創作の背景にあるのは法華経の精神と農民的な生活風景。この「雨ニモマケズ」の手稿には「南無上行菩薩 南無多宝如来 南無妙法蓮華経」など菩薩や如来や法華経の名が連ねられています。

この「雨ニモマケズ」はクリスチャンである斎藤宗次郎がモデルになっているといわれています。当時、クリスチャンは迫害を受けており、彼の娘は迫害の末死んでしまいました。それでも斎藤氏はくじけることなく神に祈り続け、雨の日も風の日も雪の日も休むことなく町の人のために祈り、働き続けたそうです。

賢治の作品全体に通じる、自己犠牲の精神。

それは「星めぐりの歌」にも共通するテーマです。

部類の音楽好きだった宮沢賢治。自らレコードコンサートを開いたり、上京のおりには新響(現・NHK交響楽団)のチェリストにレッスンを受けたり、また自身の文学作品の中にもたくさんの音楽がちりばめられています。5年間教員を務めた花巻農学校時代には自作の音楽を学校演劇で用いたり生徒にうたわせる歌曲も残しています。この星めぐりの歌は盛岡高等農林学校卒業直後に書かれた賢治の処女作ともいわれる童話「双子の星」に収めた詩に曲付けしたものです。

夏の天の川の西に小さな水晶のお宮があり、そこに住むチュンセ童子とポウセ童子の二人の星。彼らのお役目は、二人仲良く「ほしめぐりの歌」に合わせて一晩中銀笛(フルート)を吹くこと。

ある夜、白鳥座とさそり座が喧嘩をはじめてしまいます。天体には不穏な空気。二人は、身を挺してさそり座と白鳥座の喧嘩を仲裁します。

天体に平和が訪れると、そこには「ほしめぐりの歌」が鳴り響き、二人の童子は銀笛を奏でます。

では、この星めぐりの歌はだれが歌っているのでしょう?

もともと、ハーモニーという言葉の語源はギリシア神話の女神ハルモニアに由来し、事物の調和を意味します。この「双子の星」においても、チュンセ童子とポウセ童子の二人の星は大鳥の星とさそりの星の喧嘩を仲裁します。二人の懸命な仲裁によって天上に「ほしめぐりの歌」が響き渡り、それにあわせて銀笛を吹くことができるようになるのです。

天体の調和、世界の調和…それ自体が「ほしめぐりの歌」なのかもしれません。

 

 

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