BEL CANTO meets JAZZ~Giannicola Pigliucci & Alberto Rabagliati

もう何年も前になりますが、東京藝術大学声楽科に入学し最初に声楽を師事したのはジャンニコラ・ピリウッチ(Giannicola Pigliucci)先生でした。先生はサンタチェチーリア音楽院を卒業後、スポレートでのコンクールで優勝し、ローマやナポリの劇場やスカラ座で活躍し、ロリン・マゼール、クラウディオ・アバド、ゲルギエフなどの指揮者や、デル・モナコ、パヴァロッティ、ヴィッカーズなどの歌手たちと共演されてきました。先生の歌
ピリウッチ先生のクラスでは徹底して発声を磨いていました。オペラ界で活躍されている森雅史さん、今井俊輔さん、城宏憲さんらは皆このクラスの先輩です。

ピリウッチ先生の教えて下さる発声は、イタリア人の中でも古い伝統を守る歌い手のスタイルだったように思います。「狭い、狭い」というのが先生の口癖ですw
バリトンでは、バッティスティーニMattia Battistini(バスティアニーニではなく)、デ・ルーカGiuseppe de Luca、テノールでは、ジーリBeniamino Gigliやティト・スキーパTito Schipaの声を例にあげられることが多かったように記憶しています。
学部時代の数年間は、発声についてどうしてもつかみ切れない数年間を過ごしました。どうしても凝り固まってしまう自分に先生は、「もっとJazzみたいに自由に歌ってみてください。これもベルカントです」といって、イタリアンジャズのフレーズを(私の耳にはとうていジャズには聞こえませんでしたが…)歌ってくださいました。
♪Quando canta Rabagliati fa così♪~
当時、この歌の元歌が知りたくて、ディスクユニオンなどで相当探しましたが、たどり着くことができませんでした。当時、You tubeには今ほど多くの曲が上がっておらず、そこでも見つけることができませんでした。
最近ふっとそのことを思い出し、Youtubeで検索をかけてみると…

ありました!!
Alberto Rabagliati ♪Quando canta Rabagliati
アルベルト・ラバリアーティAlberto Rabagliati(1906-1966)は、ミラノ生まれの俳優、歌手。1907年にルドルフ・ヴァレンティノそっくりさんコンテストで優勝すると、ハリウッドに移り俳優としてのキャリアを開始します。しかし、俳優としての仕事は四年ほどで途絶えてしまいます。ハリウッドでの時間は、彼がジャズ、スイング、スキャットに触れるきっかけとなり、その後は歌手として活躍します。
この曲”Quando canta Rabagliati”〈ラバリアーティが歌うと〉は1941年頃に発表されました。時期的に言うと、ジーリやスキーパといった歌い手が50代に入った頃。オペラ界では実力も人気も絶頂だったころでしょう。
ラバリアーティはアメリカ生活でジャズやスキャットに親しみ、この曲でもその経験が遺憾なく発揮されています。しかし、発声はベルカント!!
イタリア人の中に流れる歌心を感じずにはいられません。
今年はクラシック音楽の枠を外して色々な経験をさせていただいていますが、現場で出会うのは確固としたテクニックの持ち主ばかり。ラバリアーティの歌を聴いて、改めて我が師から学んだものの大きさを実感しました。

以下、”Quando canta Rabagliati“の歌詞と拙訳です。(拙い語学力から誤りがあるかもしれません。誤りがありましたらご指摘いただけますとありがたいです。)

【Quando canta Rabagliati】
Oggi un gagliardo tenor
o un valente sopran
più non trovan da cantar
Primi pensieri d’amor
oggi il pubblico stran
vuol sentire rabagliar Perché? Perché?
Ahimè ahimè
Quando canta Rabagliati fa così
ueee
e sui fianchi ben piantati resta lì
ueeeee
nello sguardo scanzonato
come un lampo fa brillar
e agitando sempre l’indice elevato
s’ode un canto che somiglia a un miagolar!
Quando canta Rabagliati fa così
uedolidoleee
e tartaglia appassionati
bi bi di biiii
fra gli aba ba baciami piccina
sulla bo bo bobadibabà
mentre questo Tito Schipa non lo fa!

【ラバリアーティが歌うと】
今日じゃ力強いテノールや
熟練のソプラノは
もう歌手たちの中で見つけることはできない
今は皆んな、まず恋のことを考えて
なぜかラバリアールを聞きたがる
どうして?どうして?
嗚呼、嗚呼
ラバリアーティがこんな風に歌う時
uee…
昔の奴らは脇に追いやって
ueee…
稲妻が輝くような気ままな眼差しと、 高く振り上げた人差し指の中、猫のように歌うんだ
ラバリアーティがこんな風に歌う時
uedolidoleee
情熱的にモゴモゴ歌うのさ!
bi bi di biiii
キスしておくれ
bobadibabàって歌う時
ティト・スキーパはこんなことしてくれなかっただろ!

コメントする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。