Lost in the stars
原作 Alan Paton(アラン・ペイトン)
台本 Maxwell Anderson (マクスウェル・アンダーソン)
作曲 Kurt Weill(クルト・ヴァイル)
1949年に発表されたミュージカル《Lost in the stars》の中の一曲。
【あらすじ】
舞台は南アフリカ。
片田舎ドチェニ村の黒人牧師スティーブン・クマロは、ヨハネスブルクで消息不明になったしまった息子アブサロムと、娼婦に落ちてしまった妹のガートルードに会いに一人汽車でヨハネスブルクへ向います。道中、停車場でドチェニ村の白人大農園主ジェイムス・ジャービスと、ヨハネスブルクで黒人の権利を守る進歩的な立場をとっている息子のアーサー・ジャーヴィスに出会うのですが、クマロに対して親しげに挨拶する息子アーサーを見て、人種的偏見をもつジェイムスは不快感を露わにします。
ヨハネスブルクに着いたクマロは妹ガートルードの息子を引きとりはするものの、息子アブサロムを見つけることはできずに帰途に就きます。
場面変わって、ヨハネスブルクの裏町の地下酒場。
クマロの息子アブサロムと仲間たちは強盗の相談の結果、皮肉にも黒人の権利保護の立場をとる弁護士アーサー・シャーヴィスに目を付けます。アブサロムはアーサーを射殺し、投獄されてしまいます。
この曲《Lost in the stars》は、殺人を犯した息子アブサロムを牢獄にみつけたクマロ牧師の歌。
死刑判決を受けたアブサロムに恩赦が下る希望を託し、クマロは農場主ジェイムスを訪ねますが、正義の報いだとして拒否されます。スティーブンは、死刑判決を受けた息子の恋人イリーナを訪ね、死ぬ前に息子アブサロムと結婚することに同意させ、自らは息子の事件のために聖職を離れると決意します。
アブサロムが処刑される夜、クマロの決意をみて少しずつ心を動かされていたシャーヴィスは処刑される息子を思って苦しむクマロを慰めるために訪れ、ふたりの人種的な垣根を超えた和解の握手によって幕が下ります。
ヴァイルはこの作品を「ミュージカル悲劇」と位置けました。アラン・ペイトンの原作ではこの作品のような和解はないのですが、ここでは救いを以て劇が締められます。
原作者、アラン・ペイトン(1903~1988)は南アフリカのディエクルーフ感化院の院長をつとめ、犯罪をおかしたアフリカ少年たちのために働きました。そこで改革を行い、厳しい刑務所のような施設を温かい学校へと変貌させました。彼の著作に聖フランチェスコの祈りを解説したものがあります。
憎しみのあるところに愛を
絶望のあるところに希望を
闇のおおうところに光を
そうしたメッセージがこのナンバーにも込められているように思います。