2022.6.19 葛飾区合唱祭 アンサンブルかつこん 合唱指揮

葛飾区合唱連盟主催の合唱祭で、以前合唱指導にうかがっていたアンサンブルかつこんさんの指揮をさせていただきました。

合唱から声楽に入った自分としては、合唱人としての血が騒ぎました。思えばコロナ前、合唱団設立に向けてオリジナル曲を依頼したりしていました。コロナ禍で合唱活動のスタートは想定できなかったので完全にストップしていました。その間も東京純心大学で合唱音楽の授業を持ち、合唱とのご縁は途絶えずにいます。

今回、指揮をして改めて合唱、アンサンブルの面白さを感じました。プロではないからこそ込められる音楽への思い。アマチュアならではの音楽と生活との距離感。

仕事として音楽と関わる前に、最高のアマチュアでいたいという、活動を始めた頃の初心を思い出させていただきました。

今回指揮したのは

やなせたかし作詞 木下牧子作曲〈さびしいカシの木〉

小田切清光作詞 鈴木憲夫作曲〈ほほえみ〉

の二曲。

先日出演した《本能寺が燃える》の演出家、西川千雅氏から、日本的な身体表現には身体の中にある「緊張関係」が大切であると教わりました。例えば、手を上げる動作一つでも、ただ上げるだけではなく、肩甲骨のあたりを下げる意識をもって初めて成立するということ。

身体表現だけでなく芝居の中でも、相手と自分、観客と自分、過去の自分と今の自分…などの間にある緊張関係を作ることが大切だということも学びました。

であるならば音楽表現でも!!と思い、今回の二曲に取り組みました。

《ほほえみ》では、別れの寂しさと再会への希望。《さびしいカシの木》では、希望を持つこと、祈ることと、その孤独。

どちらの曲も寂しさと希望との間にある緊張関係から楽譜を読んでみました。合唱曲ならではの、誰もが共感できるメッセージ。そこに歌うための表現を施していく作業。短い指導期間ではありましたが、かつこんの皆様との再会もありとても幸せな時間でした。

2022.6.11 PMS合唱団 第38回公演

2022年6月11日 PMS合唱団 第38回公演に出演致します。

W.A.モーツァルト《ハ短調大ミサ曲》Kv.427 、F.シューベルト《Stabato Mater》D383バス・ソロを演奏いたします。

【日時】2022年6月11日(土)16:30開場 / 17:00開演

【場所】大和市文化創造拠点シリウスやまと芸術文化ホール

【出演】

ソプラノ 中江早希 隠岐彩夏

テノール 隠岐速人

バリトン 田中俊太郎

オーケストラ グロリア室内オーケストラ

合唱 Philia Messiah Singers PMS合唱団

指揮 松村努

オルガン 織田祥代(敬称略)

【料金】4000円(全席自由)

予約・お問合せ PMS合唱団 045-825-0522[松村]

2022.2.13 『編成スペシャルオーケストラによる~詩と音楽と心にふれるコンサート~ 』

2月13日に出演するコンサート。僕はモーリス・ラヴェル「ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ」と山田耕筰の歌曲を演奏予定です。
オーケストラ伴奏で歌曲を歌える機会はなかなか無いので、とっても楽しみです♫

『編成スペシャルオーケストラによる~詩と音楽と心にふれるコンサート~ 』
2022年2月13日
19:00開場 19:30開演
府中の森芸術劇場 ウィーンホール

出演予定者
#内門卓也(ピアノ)
#金山京介(テノール)
#田中俊太郎(バリトン)
#本田ゆりこ(ソプラノ)
#加賀清孝(指揮)
#森岡聡(ヴァイオリン)
#廣瀬心香(ヴァイオリン)
#石田沙樹(ビオラ)
#鈴木皓矢(チェロ)
#森岡有裕子(フルート)
#大隈淳幾(オーボエ)

ご来場チケット
3000円(学生:2000円)
動画ご視聴チケット
2000円

【チケットはこちら↓↓↓】
https://t.livepocket.jp/e/h12hf

#バリトン #声楽 #田中俊太郎 #ラヴェル #山田耕筰 #歌曲

2022.1.8〜「東京ディズニーシー®︎20周年:タイム・トゥ・シャイン!イン・コンサート」

「東京ディズニーシー®︎20周年:タイム・トゥ・シャイン!イン・コンサート」に出演させていただきます。

公演について

2021年9月4日に開園20周年を迎えた東京ディズニーシーでは、1年間にわたるアニバーサリーイベント「東京ディズニーシー20周年:タイム・トゥ・シャイン!」が開催されています。輝きに満ちた特別な1年を音楽でお祝いするために企画されたのが、「東京ディズニーシー20周年:タイム・トゥ・シャイン!イン・コンサート」ツアー。“きらめく想い、はじけるワクワク あふれ出す音楽を胸に、心輝かせましょう!”を合い言葉に、2022年1月から全国16都市で17公演を行います。その演奏曲目と出演者の詳細が決定しました!

 

●どんなコンサート?

“海にまつわる物語や伝説”をテーマにした世界で唯一のディズニーテーマパーク、東京ディズニーシーが誕生したのは、2001年9月4日のこと。アトラクションやエンターテイメントのほとんどが、ここでしか体験できないものばかり。そしてその体験を彩る音楽も、東京ディズニーシーのために書き下ろされた、あるいは特別にアレンジされたオリジナリティの高い楽曲がそろっています。

「東京ディズニーシー20周年:タイム・トゥ・シャイン!イン・コンサート」は、東京ディズニーシーで20年間に生まれた名曲の数々を、オーケストラとシンガーたちのライブ演奏で、スクリーンに映し出されるパークシーンの美しい映像とともにお楽しみいただく唯一無二のコンサート企画。2016年に開催され大好評を博した「東京ディズニーシー15周年“ザ・イヤー・オブ・ウィッシュ”イン・コンサート」に続く第2弾で、公演数・内容ともにパワーアップ。2022年1月8日(土)三郷市文化会館を皮切りに、全国16都市で17公演を行います。

 

●プログラムの内容は?

今年のプログラムは5つのシーンで構成されています。オープニングとなる【シーン1】では、「レジェンド・オブ・ミシカ第3章」をお届け。『アベンジャーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなどの映画音楽で知られる作曲家アラン・シルヴェストリが手がけた心踊る楽曲で、ドラマティックに幕を開けます。

【シーン2】のテーマは、“東京ディズニーシー・バリエーション”。ディズニー音楽の巨匠アラン・メンケンが書き下ろしたアトラクション「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」のテーマ曲「コンパス・オブ・ユア・ハート」や、ジョン・ウィリアムズの映画音楽をベースにした「インディ・ジョーンズ®・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮」など、冒険心をくすぐる人気アトラクションの音楽を演奏します。また、「ハロー、ニューヨーク!」「ビッグバンドビート」「テーブル・イズ・ウェイティング」といったレギュラーショーの音楽、さらに、2023年度開業予定の新エリア「ファンタジースプリングス」にちなんで、映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の楽曲も。バラエティに富んだ選曲で、東京ディズニーシーの音楽の魅力をより深く味わえます。

【シーン3】は、「ディズニーシー・シンフォニー」から「ファンタズミック!」まで、夜のメディテレーニアンハーバーでくり広げられてきた歴代のナイトエンターテイメントの音楽。

【シーン4】は、イースターやハロウィーン、クリスマスなど、季節ごとに行われてきたユニークなシーズナルイベントの音楽。「ボンファイアーダンス」や「ザ・ヴィランズ・ワールド」など、一大ブームを巻き起こした忘れられないショーの楽曲で熱く盛り上がります。

そして【シーン5】では、1周年の「サンクス・トゥ・ユー」から15周年の「ウェン・ユア・ハート・メイクス・ア・ウィッシュ」まで、アニバーサリーソングを通して思い出を振り返りながら、20周年のテーマソング「タイム・トゥ・シャイン!」で華やかなフィナーレを迎えます。

 

●出演者について

演奏するのは、本コンサートツアーのために特別に編成された“タイム・トゥ・シャイン!”オーケストラ&シンガーズ。指揮は、国内主要プロオーケストラに客演指揮者として出演しつつ、洗足学園音楽大学で講師を務める松元宏康(まつもとひろやす)。

また本コンサートツアーでは、シンガーが歌のみならず、ダンスとMCも担当します。そのため選ばれた8名のシンガーたちは、いずれ劣らぬ経験と実力の持ち主ばかり。注目は、今回初参加となる小此木麻里(おこのぎまり)。映画『塔の上のラプンツェル』でラプンツェルの歌声を担当し、『シュガー・ラッシュ:オンライン』でもアリエル役を務めるなど、ディズニーのファンには絶大な人気を誇るミュージカル女優です。

 

特別なきらめきを持った音楽と迫力の演奏、シンガーたちのパフォーマンス、そしてスクリーンに映し出されるパークシーンの映像が、東京ディズニーシーを訪れたときのときめきを呼び起こしてくれること間違いなし。東京ディズニーシー20周年を、音楽で一緒にお祝いしましょう!

<ツアー概要>

公演タイトル:東京ディズニーシー®20周年:タイム・トゥ・シャイン!イン・コンサート

出演公演日程

1月8日(土) 13:00開場・14:00開演 / 埼玉・三郷市文化会館 大ホール

3月13日(日) 16:00開場・17:00開演 / 東京・立川ステージガーデン TACHIKAWA STAGE GARDEN

3日20日(日) 16:00開場・17:00開演 / 愛知県芸術劇場大ホール

4月3日(日) 16:00開場・17:00開演 / 新潟県民会館 大ホール

4日9日(土) 16:00開場・17:00開演 / 宮城・東京エレクトロンホール宮城

4日10日(日) 16:00開場・17:00開演 / 福島・いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール

4月29日(金・祝) 17:00開場・18:00開演 / 千葉・舞浜アンフィシアター

5月1日(日) 16:00開場・17:00開演 / 長野・ホクト文化ホール(長野県県民文化会館) 大ホール

5月3日(火・祝) 16:00開場・17:00開演 / 神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール

5月5日(木・祝) 16:00開場・17:00開演 / 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru8月13日(土) ※昼夜2回公演 11:30開場・13:00開演 / 16:30開場・18:00開演 / 東京国際フォーラムホールA ※東京ディズニーシー®20周年は2021年9月4日(土)から2022年9月3日(土)まで開催

※私田中は1/8埼玉、2/19群馬、3/20愛知、4/3新潟、4/9宮城、4/10福島、4/29千葉、5/1長野、5/3神奈川、5/5北海道、8/13東京・フォーラム公演に出演予定です。(2月23日熊本、2月24日福岡、2月25日広島、2月27日大阪、3月13日立川公演には出演いたしません。)

※キャラクターの出演予定はございません。 指揮:松元宏康出演:“タイム・トゥ・シャイン!”オーケストラ&シンガーズ

女性シンガー(50音順):尾川詩帆/小此木麻里/MARIA-E/湊陽奈男性シンガー(50音順):岡施孜/田中俊太郎/長谷川開/山野靖博/ユーリック武蔵/横田剛基*公演により出演シンガーが異なることがございます。

チケット価格(全席指定/税込):S席:8,800円/A席:7,800円チケット発売日:1/8(三郷)〜2/27(大阪)公演:発売中           3/13(立川)〜8/13(東京)公演:2021年11月17日(水)〜/プレイガイド先行受付(先着)

 

演奏予定曲目(演目タイトル)

第1部:

<Scene1: Opening>

レジェンド・オブ・ミシカ第3章(レジェンド・オブ・ミシカ)

<Scene2: Tokyo DisneySea Variation>

クリスタル・ウィッシュ・ジャーニ / キング・トリトンのコンサート(マーメイドラグーンシアター)

コンパス・オブ・ユア・ハート(シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ) / 

ポルト・パラディーゾ・ウォーターカーニバル / センター・オブ・ジ・アース / 

ストームライダー / インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮 / 

ピクサー・プレイタイム・パルズ / ハロー、ニューヨーク! / テーブル・イズ・ウェイティング / 

右から2番目の星(『ピーター・パン』) / 輝く未来、自由への扉(『塔の上のラプンツェル』)

生まれてはじめて、レット・イット・ゴー(『アナと雪の女王』) / 

マジカルモーメント、シーズン・オブ・ハート(バレンタイン・ナイト) 

シング・シング・シング(ビッグバンドビート) / Be Magical!(東京ディズニーシー10周年より)

第2部:

<Scene3: Nighttime Entertainment>

ファンタズミック!/ ディズニーシー・シンフォニー/ ブラヴィッシーモ!

<Scene4: Seasonal Special>

Tip-Topイースター(ディズニー・イースター) / ミニーのトロピカルスプラッシュ(ディズニー・サマーフェスティバル) / ボンファイアーダンス / ザ・ヴィランズ・ワールド(ディズニー・ハロウィーン) / 

カラー・オブ・クリスマス(クリスマス・ウィッシュ) / イッツ・クリスマスタイム!(ディズニー・クリスマス)

<Scene5: Anniversary Songs Medley>

サンクス・トゥ・ユー(東京ディズニーシー1周年より) / 

シー・オブ・ドリームス(東京ディズニーシー5周年より) / 

ミッキーのファンタスティックキャラバン(東京ディズニーシー2周年より) / 

ウェン・ユア・ハート・メイクス・ア・ウィッシュ(東京ディズニーシー15周年より) / 

タイム・トゥ・シャイン!(東京ディズニーシー20周年より) / 

※曲目・曲順は変更になる可能性がありますのでご了承ください。

 

<公演オフィシャルサイト>

https://www.disney.co.jp/eventlive/tds20concert/

2021.10.19,21チマローザ《秘密の結婚》終演

チマローザ作曲《秘密の結婚》終演いたしました。
オペラの喜劇の登場人物はイタリア古典即興劇コメディア・デラルテのキャラクターが背景にあったり、声種によっても役作りの方向性に違いがあったりします。
今回、演出の飯塚励生さんや指揮の松下京介さん、島根の大先輩妻屋秀和さん、そして共演者の皆さんからは、そうしたオペラ・ブッファの音楽作り、役作り、舞台作りの楽しさに気づかせていただきました。
タイトな稽古スケジュールでしたが、だからこその勢いで2つの本番を駆け抜けられたように思います。
主催、ジーラソーレミュージック代表の本田さんの行動力にも感服。舞台芸術が厳しい時期にこのエネルギーは宝です✨
皆様に感謝。

2021.9.16 Menicon SUPER CONCERT 歌劇《あしたの瞳〜もうひとつの未来〜》終演

音楽稽古開始から約3ヶ月間の稽古期間を経て《あしたの瞳》、無事終演致しました。
作曲家の宮川彬良さんのレッスンからは言葉以前にある母音、音を音楽にしていく過程に楽しみに気づかせていただき、演出家の岩田逹宗さんの舞台稽古から、歌は他ならぬ人間の肉体を使った身体表現であることに気づかせていただきました。

岩田さんの稽古中に「ようやく日本に本物のオペラが現れたと思っている」という言葉がありましたが、これは全く共感しました。おそらく稽古場にいた誰しもがそれを実感し、本番までのエネルギッシュな毎日を過ごしていたように思います。

ミュージカル作品において、《RENT》は現代のジェンダー、HIVなどの社会問題を訴え、《ミス・サイゴン》ではベトナム戦争で残された人々の真実を描き、《Into the Woods》では東西冷戦を含めた価値観の齟齬、立場による善悪の捉え方をテーマとしました。そうした20世紀的な出来事の真実を世に問うようなメッセージは、確かにオペラがミュージカルに譲ってしまっていることでもあるかもしれません。
古くて素晴らしいもの….ニッチでわかる人にしかわからないもの….いつしかそうなってしまったクラシック音楽の枠を本当の意味でうち破るのはそう簡単ではないのではないでしょうか。
しかし、今回関わらせていただいた作品は力強く、そして楽しく魅力的に新しい可能性を与えてくれていると実感しています。

《あしたの瞳》は、20世紀戦後の日本のものづくりの物語です。
日本が国として経験した敗戦…そこから今日この日に至るまで、どれだけ多くの人の「あした」があったことでしょうか。敗戦から今日に至るまで、たくさんの先人たちが「あした」を実現してきました。
この物語のモチーフであるメニコン創業者の田中恭一氏(劇中では田宮常一)もそうした先人の一人。
主人公常一を通じて語られるのは、何も無くなった焼け野原から、ものを作り時代をつくってきた20世紀日本人の姿です。

時代を物語り、未来に希望を与えてくれるこの作品に関わることができ、とても幸せでした。
全身で向かい合うからこそ見えてくるものがある。僕自身も、このオペラとの関わりから一つの「あした」を与えてもらったような気がしています。

高田三郎と日本の文学・音楽②

前回、中学時代より、『世界文学全集』などで各国の文学に親しみ、殊に近代文学に傾倒していた高田三郎(191320001についてまとめてみました。

今回は、彼がキリスト教と出会い「やまとのささげうた」を作曲した経緯についてまとめてみたいと思います。

【高田三郎のキリスト教音楽】

高田は、カトリック信者であった妻・留奈子の影響もあり1953年にカトリックの洗礼を受けました。

日本のカトリック教会の聖歌は1933年、『公教聖歌集』としてまとめられていましたが、以降改訂の気運が起こり、48年には『公教聖歌集』の増補版が出版され、その後の56年には「聖歌集改訂委員会」が発足。高田はこの改訂委員会に音楽委員をして加わることになりました。「聖歌集改訂委員会」では日本語聖歌の創作が試みられ、ミサ曲の日本語訳を委員会が、そして作曲を高田が担うことになりました。その結果生まれたのが《ミサ(やまとのささげうた)》で、これは改訂聖歌集として1966年に発表された『カトリック聖歌集』に収められました。

高田は当初、洋楽風の旋律を想定していましたが、同じく音楽委員を務めたゴーセンス神父(エリザベト音楽大学初代学長)からの反対を受け、日本的な旋律を作曲することになりました。第二バチカン公会議後、1967年に発表された「典礼音楽に関する指針」(典礼検証実施評会議)では「その地域の人々の精神、伝統、特色ある表現に巧みに調和」させる音楽を重視されており、これに先立つゴーセンス神父の助言には先見の明があったと言えます。

こうして日本の伝統的な旋律に意識を向けた高田は、ミサ典礼文に仏教音楽の旋律的特徴を取り入れていきました。浄土宗の経文、礼賛、御詠歌の旋律要素を「日本人の祈りの心と一致」するように取り入れていったのです。

高田はやみくもに日本的旋律を求めることだけをせず、教会の伝統を学ぶため1957年にはフランスのソレム修道院で2週間のグレゴリオ聖歌漬けの生活も送りました。19世紀グレゴリオ聖歌研究の中心地であったとい言っても過言ではないソレム修道院。ソレム式の歌唱は、後にグレゴリオ聖歌が書かれたネウマ譜の仔細な解読を行った人々(セミオロジー)からの批判を受けましたが、高田はアルシス(飛躍)とテーシス(休息)を演奏の骨子としたソレム式の歌唱と日本語の親和性に注目し、これも聖歌創作の礎としました。

 

とかく、「日本的」という概念と直面した芸術家は、日本・東洋を我、西洋を彼と、二元的な考え方になりがちですが、高田は日本の聖歌創作の流れの中にいて、日本の伝統的な祈りとキリスト教音楽、ひいては西洋音楽の礎といっても過言ではないグレゴリオ聖歌の真髄を学び取り自身の聖歌創作へと生かしていた点で、そうした二元論的な捉え方とは一線を画していると言えます。

高田の作品が今日でも教会で、またコンサートホールで鳴り響いているというのは、私たちにとってかけがえのないことだと思います。

私も高田三郎の歌曲を学び、演奏していきたいと思います。

 

《参考文献》

高田三郎 「『詩』について」『音楽芸術』東京:音楽之友社、1993.12、41〜43頁。

紅露剛、石田昌久、坂倉直美、関谷治代「高田三郎のあゆみ–没後10年を記念して」『南山大学図書館カトリック文庫通信』 愛知、南山大学、2020.11、28

 

 

高田三郎と日本の文学・音楽①

合唱曲《水のいのち》や歌曲〈くちなし〉(歌曲集《ひとりの対話》)で知られる高田三郎(1913~2000)は、先日の演奏会で歌唱した畑中良輔先生よりももう一つ世代が上で、東京音楽学校では信時潔やクラウス・プリングスハイムらに作曲を師事しました。

高田は、歌曲や合唱曲のほかにもカトリックの日本語聖歌を作曲したことでも知られています。彼が学生時代を過ごした戦前期には「日本的」な作曲とは何かという問題が創作の上で、また雑誌メディアの上でもさかんに論じられていた時代でした。実際に師であるプリングスハイムはそういった論争の渦中にいた人物でもありました。得てしてそうした論争は、技術上の問題や、文化接触による摩擦の問題を含んでいる中、高田はもう少し純粋に創作上の問題、または祈りの中での問題として日本の音楽や文学をとらえていたように思います。

高田三郎と文学

高田は1913年、名古屋市中区矢場町の芸術や音楽に造詣の深い弁護士の家庭に生まれました。十歳年上の兄の影響から、中学に入ったころの高田は音楽と同時にH・G・ウェールズ著『世界文化史体系』や『世界文学全集』に傾倒し始め、「人間そのものの精神に深く入り込んで」いきました。やがて、彼は音楽を知るにつれ、フランスをはじめとする西洋の音楽作品の中に全集の中の『近代詩人集』で読んだ近代詩人たちの作品を発見していきました。ドビュッシーの《牧神の午後》と出会いは、マラルメの文学を管弦楽作品とした作曲家の計画から、歌曲のテクストとして用いることができる詩の限界にも気づいたといいます。

その後、作曲科の学生となった高田は、最初の歌曲として堀口大学の訳でヴェルレーヌの「悲しき対話」に作曲し後に立原道造、深尾須磨子、北川冬彦、高野喜久雄などの詩人と出会いました。

高田自身、日本の「日本の詩というものは明治の開国以降に出始めたもので、その前は和歌、俳句が締めており(中略)詩の世界は輸入を待ってその後に育っていった」、「歌曲におけるテクストとしての詩について辿ってきた私の道筋も、その歴史と並んで来ており、あながち廻り道とは言えない」と述べています。

高田にとっての日本の近代史は、『世界文学全集』の「近代詩人集」のその先にあると考えることができます。このような「世界文学」的な視野で日本の近代史を捉える彼の文学観は、同じく明治以降の「輸入」品である西洋音楽による作曲において、自然なバランス感覚を持ちながらの創作することを可能にしているのではないかと思います。そうしたバランス感覚から生まれ出る高田の音楽が、難しいもの、有難いものといったクラシック音楽につきものの先入観を超えて、自然と心に染み入るものであることは、彼の合唱、歌曲作品が今でも愛される理由の一つであるのではないでしょうか。

 

2021.9.16 Menicon SUPER CONCERT 歌劇《あしたの瞳〜もうひとつの未来〜》

Menicon SUPER CONCERT 歌劇《あしたの瞳〜もうひとつの未来〜》

2021年9月16日17:30開演

愛知県芸術劇場大ホール

宮川彬良さんの音楽によるこの舞台。見るとは何か、見えるとは何か。ただの歌劇じゃないエネルギッシュな舞台をお届け致します。

700名様無料ご招待のこの舞台。皆様のご来場をお待ちしております。

お申し込みは、こちらのホームページより。

https://youtu.be/NWdmXIQyaAY

岡田暁生『音楽の危機–––《第九》が歌えなくなった日』とハイドン《十字架上のキリストの最後の七つの言葉》

先日2021年6月27日のハイドン《十字架上のキリストの最後の七つの言葉》本番と、岡田暁生氏著『音楽の危機–––《第九》が歌えなくなった日』(東京:中公新書、2020年9月25日)を読んで考えたことをメモ的にまとめたいと思います。かなり徒然な内容です。 合唱団主催の演奏会の延期、中止が続き、また私自身も大学の合唱の授業は今期は全てオンラインでの開講となっており、ここ一年ちょっとの間で多数の人が集まって音楽を楽しむ、学ぶという場所が消えてしまっていることに、もう半ば慣れてしまっていました。しかし、先日のハイドン《十字架上のキリストの最後の七つの言葉》は、オーケストラを弦楽四重奏バージョンに改めるなど工夫をこらしての演奏だったとはいえ、第一生命ホールで合唱、器楽、ソリスト、聴衆のすべてが揃って、一つの時間を共有できたこと、その久しぶりの体験に、やっぱりこういう音楽が好きだと実感する本番となりました。 ここ一年ちょっとの間、ライブ、コンサートに実際に足を運んで楽しむことができなくなった機関、アーティストが模索して実践してきたのは、ライブ配信やそれに伴う録音技術の習得でした。実際に私も素人ながら録音機材、パソコン、カメラを入手し撮影や動画編集の勉強を少しずつはじめています。 新しい音楽の発信の仕方を模索する一方で、何か羽をもぎとられたような虚しい感覚も同時に感じていました。 人と人が同じ場所の空気を共有しない音楽・・・ レコーディングやオンラインライブなどを通じて、そこにちょっとした違和感を持ちながら過ごした一年ちょっとでもありました。これまで悩んできた音楽には、再生不可能な一度きりの瞬間へかける時間、思いがあり、これまで楽しんできた音楽には、共演者、聴衆と同じ音楽を共有したその唯一の瞬間の喜びがありました。 岡田氏は著書の中で「『録音された音楽』と『生の音楽』とは根本的に別ものであり、前者は『音楽』ではないことを明確にするべく、『録楽』という概念を提唱』した作曲家三輪眞弘氏の考えに沿いながら話を進めていきます。 「音楽」と「録楽」・・・どらが良いとか悪いとかいうことではなく、この二分法はとてもしっくりくるような気がしました。 岡田氏はまた、「美術や文学は音楽と違って孤独な鑑賞に向いている」が、「録楽は、美術にとても近い」と語っています。 リモートワークはプライベートな環境の中で他者と情報を共有しつつ仕事を進めていきます。「録楽」あるいはライブ配信においても、あくまで鑑賞の場はプライベートな空間。それは有名な美術作品をだれもいない美術館で鑑賞するのと同じような体験なのではないでしょうか。   では、「音楽」とは何か。これは難しい問題だと思いますが、今のコンサートの形(興行主が企画をし、チケットを売り、そのチケットを買えばだれでも聞きに行くことができる)が成立したのは第一次産業革命後の古典派時代のことでした(岡田氏『西洋音楽史』に詳細)。それ以前の王侯貴族だけの特権的な持ち物だった音楽が、一般市民にも開放されたというオープンな側面がある一方で、都市に住んでいるという条件は音楽を日常的に享受する上で欠かすことができませんでした。また、経済的な面を含めチケットを買うことができるということも、ある意味で条件なのかもしれません。 まとめ 「録楽」は美術鑑賞、読書と同じ個人的な体験であるのに対して、「音楽」は閉ざされた空間での集団的な体験である。 「録楽」はリモート、「音楽」はローカル   18世紀に起きた第一次産業革命によって、現在の音楽聴取の文化が整えられました。現在は第四次産業革命すなわちIoT(Internet of things)の時代として、すべてのモノ・コトがインターネットでつながれようとしています。そんな中で、音楽においてもリモートでの聴取体験が一般化しつつあります。私は古い人間といわれようと、ローカルな音楽体験が好きです。おそらくローカルな体験をリモートで共有するという時代になってくると思います。そうした意味で、ソロよりもデュオあるいはアンサンブルの形式の音楽がより勢いをもってくるような気がしています。ソロの体験は人々の日常の中に既にあるからです。 おうち時間、ひとり時間に慣れた私たちを、本来黙想の音楽であるハイドン《十字架上のキリストの最後の七つの言葉》が、ホールで共有する一人一人のひとり時間をおおらかに包み込んでくれました。